珍しいムーンフェイスのブローチ。満月のサフィレットと三日月のペーストガラスの組み合わせのようです。元のセラーさんによるとオリジナルらしいですが、サフィレットのムーンフェイスのブローチはなかなかありません。今ではほとんど見られなくなっており、出るのはキャビアスプーンや、それを加工したペンダントやリングになっています。こちらはブローチですので、専用のコンバーターを装着すれば品物を壊すことなくペンダントに出来ます。サフィレットの色味も、典型的な赤味の強いレンガ色のブラウンに、ブルーやパープルが浮かぶ、ピンクがかったタイプの珍しいムーンフェイス。サフィレットのムーンフェイスはほとんどグリーンがかったタイプで、濃い青味のものもある…程度で、パープル系統のピンクがかったムーンフェイスは非常に稀です。ブラウンも赤味がかったというよりは赤系統に近く、マット加工で濃い色合いにも関わらず不思議な淡さと言いますか、透明感があります。恐らくバックフォイルによるもの(フォイルの欠落していると見られる箇所の色味は暗く沈み、マットな質感です)で、一風変わった色味もその反射のためにより強調されており、メタリックな輝き方をします。ロッククリスタル(天然の水晶)やクリスタルガラスの底面にシェル(真珠母貝)を張り合わせたダブレットのムーンフェイスにも似ています。出展中のブローチがありますので、そちらもご参考までにご覧下さい。そちらの実物の表面のムーンフェイスは、もう少しグリーンがかり、虹色光沢が見られます。淡い暖色系と寒色系のカラーが白っぽい輝きで真珠光沢様のシェルのような色味に見えています。こんなところから、たまにサフィレットがイリディッセントガラス(ラスター彩色の虹彩ガラス、実際にこのような色味が出るサフィレットは、表面の塗装やシェルのダブレットではなく、フォイルバック=ミラーバックのボクソールガラス)とされていたりもします。このムーンフェイスの地色はピンクがかったパープル〜パープルがかったブルーです。サフィレットの裏側に箔があってもなくても、光に透かすとベースのブルーのクリスタルガラスの地色が見え、その濃淡も判ります。ムーンフェイスもやはりボクソールが美しいです。濃い色合いのマットなフロスト加工のサフィレットと状態の良い箔の組み合わせの美しさは特筆すべきものがありますが、特に月のメタリックに輝くイメージにはこれ以上ないと言っていいくらいマッチしています。古いサフィレットで、パーフェクトに箔まで残っているものはなかなかなく稀ですが‥とても綺麗です。月のジュエリーと言うと、プレーンに白であればロッククリスタル(水晶)、青のブルームーンをイメージしたムーンストーンと、概ねアンティークの相場は決まっています。赤い月をイメージしたムーンフェイスは宝石にはほとんどなく、オレンジやイエローのチェコガラスにあるくらいで、不思議と少ないです。現実でも紅い月は稀に見られる程度ですが、赤い月と青い月を同一の(石も含む)ガラスでイメージしたムーンフェイスはサフィレットの青と赤(茶)が最初で唯一かも知れません。通常のサフィレットは赤味を帯びていてもあくまでも茶色止まりなので、文字通りの赤い月はこのタイプのサフィレットのみです。ちなみに、別のオープンバックでフォイルバックのサフィレットのムーンフェイス(ブローチ)は、こういう光り方(ほんのわずかな違いですが、このムーンフェイスは普通のボクソールというよりシェルの輝きに近い)はしませんので、やはりちょっと珍しいタイプです。色味のせいかも知れませんが…。また、このムーンフェイスは通常のモールドガラスのサフィレットより宝石のムーンフェイスに近い表情で、もしかしたらモールドガラスではなく、手彫りかも知れません。今までいくつかサフィレットのムーンフェイスを出展していますが、どれもほぼ同じサイズで、口元ははっきりと口角を上げて、大きなグリグリした瞳は三白眼で凝視しているような視線、目元・口元は皺が多く、正面向きです。このムーンフェイスは、オリジナルということなのですが、台座のクレセントに合わせるように、月が欠けている方に向いています。瞳はアーモンド型で優しく見守るような眼差し、鼻梁は高くストレート口元も優しい微笑みで、大変優美で端正な顔立ちです。シワ感なしです。同じ三日月のダングルタイプのブローチのサフィレットとは正反対の感じですので、そちらもまたご覧頂ければと思います。大きさも恐らくサフィレットのムーンフェイスでは最大サイズです。覆輪留めという、石やガラスの縁を覆う留め方なので、全体が表面に見えていません。出ている部分のみで、19.53cmあります。②に続く